会社の同僚のC子さんにお人形の衣装製作を依頼しようという企みは、第2段階に突入しました。見本として、市販のお人形服と素体を貸し出すことにしたのです。
さて、話を進める上で重要なのが、C子さんのやる気です。なにごとも創作活動の原動力は自発的な意欲です。C子さんの創作意欲を刺激することができなければ、いかに裁縫の技能があろうとも結果は期待できません。僕としては、なんとかして彼女をその気にさせなければなりません。
「我が軍の命運はこの一戦にかかっている。これは総力戦である。各員、全力を尽くしてくれたまえ」
考えた末、僕はサアラを貸し出すことにしました。僕にとっては大切なお人形ですが、ここで出し惜しみをして、後悔することになってはいけません。獅子は1匹の兎にも全力で襲い掛かるといいます。ウチのお人形の中で最大・最強の破壊力を持つサアラ。僕は最終兵器をもって、この正念場に臨むことにしました。
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C子さんに手渡すのはサアラだけではありません。気軽にいじれる素体と替えの服を数点、それとドールズパーティ本を1冊。この本に載っているアマチュア作品を見て、C子さんが「よし、私も」と思ってくれるようにと考えました。 |
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待ち合わせのサ店に、C子さん、Aさん、僕の3人が集結しました。Aさんは僕の事情を知っている、貴重な援軍です。今回は面白がって、まあ高見の見物というところですが、いざとなれば援護射撃が期待できます。 |
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お人形用のトランクって、結構大きいんですよね。物々しい重装甲に、C子さんはちょっと驚いたようです。 |
知り合いに借りてきたふりをして、「開けていいらしいよ」と言ったのですが、なぜかC子さんはうまく開けることができませんでした。代わりに僕がロックを外してやったのですが、今思うと、このときの慣れた手つきはまずかったかも(^^;。
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箱を開くと、サアラとC子さんが対面するようになっています。この瞬間に備えて、あらかじめサ店の駐車場で、サアラの髪の毛は整えておきました。両手を前で組んで、小首をかしげた姿勢で立っています。初対面としては完璧な可愛らしさのはずです。 |
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「主砲発射!」
サアラのラブリー光線が炸裂しました。甘い笑顔でC子さんを虜にするのだ! 僕は最大出力で念じました。「やれっ、サアラ!」。 |
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!! |
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き…効いてるのか? |
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おおう! 髪の毛逆さにするとまずいって〜! それと、スカートめくるな(^^;。 |
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……そうそう、それでいいんだってば。わかってんじゃん。 |
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おっ! 人形用ヘアブラシ発見! |
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おもむろにヘアスタイルを整えてくれるのはいいんだけど、ここ普通のサ店なんですよね。周囲にはほかのお客とかいるし。やってるのが女の子だからいいかもしれないけど、僕としてはちょっと居たたまれなかったです(^^;。 |
ふと我に返ったC子さんは「私、子供の頃、あんまり人形遊びとかしなかったから、つい(^^;」と照れ笑いでした。うんうん、僕も子供の頃は人形遊びとかしなかったからわかるよ(笑)。とはいえ、C子さんの態度は「可愛いから好き」というよりも「珍しいから興味がある」といった感じです。
いきなり萌え萌えになることはないだろうなと予想していましたが、やはりC子さんの気持ちは萌えにはほど遠いようです。しかたないですね。しかし、サアラを興味深く観察したり、頭を撫でてやったりしてくれたのは、僕としては嬉しい展開でした。このサアラに手を触れたのは、僕以外ではC子さんが初めてなので、ちょっと感慨深いかも。
C子さんがお人形者になるかどうかは不明ですが、少なくとも衣装屋になる可能性はありそうです。彼女がどんな服を試作してくるかわかりませんが、期待して待っているところです。
C子「なに作ろう? セーラー服とかでいいのかなあ?」
僕 「いいんじゃない?」←他人事のふり
(オッケーよ、オッケー!!)←心の声
【つづく】
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