お人形再入門4 素体改造

2001/11/3

 いよいよ佳境にさしかかってまいりました。「逆から始めるお人形再入門講座」。今回は「素体の改造」です。「より自然に、より美しく」を求めて、ボークスの素体を加工しようというものです。熟練したお人形者の目から見ればわりと「常識」なところもありますが、僕自身のおさらいを兼ねて、初心者の方に役立つように書くつもりです。また、「お金をかけず、簡単に」を心がけているので、工作の苦手な方にもとっつきやすいと思います。今回は長文ですが、ぜひ最後までおつきあいください。なお、言うまでもないことですが、ここで書かれていることは「僕の経験の範囲では」のことにすぎません。鵜呑みにせず、参考程度にとどめてください。


 さて、そもそも可動性を重視するなら、ボークスのNEO素体を買ってこれば、それでたちまち解決しそうなものです。しかしあれは、可動性と引き換えに美しさが損なわれています。美しさと可動性の両立を求めると、僕はNEW−EB素体が最適だと考えています。

■購入
 素体を買うときは上腕パーツに注意しましょう。上腕パーツは左右非対称にもかかわらず、両方右腕だったり、両方左腕だったりします。このことを僕はFAIさんのページで初めて知りました。気にしなければそれで済むのかもしれませんが、知ってしまったからには気になります。知らなかったほうがよかったかも(^^;。

Studio Rough FAIさんのホームページ

 上腕パーツよりも深刻なのが、成型色の違いです。製造工程において職人の勘と経験で調色しているらしいのですが、バラつきが大きいです(^^;。見映えに大きく影響するので、これはぜひなんとかしてほしいと常々思っているのですが、家庭内手工業?で生産している限り、なんともならんかもしれませんね。

■バリ取り
 買ってきたままの素体では、パーツの合わせ目に段差があって、見映えが悪いことがあります。これを削ってならすだけで、かなり印象がよくなります。

 セラカンナはその名の通り、セラミック製のかんなです。バリ取り専用工具と言っていいでしょう。刃に厚みがあるので、手や指を傷つける恐れがありません。でも、プラスチックはバリバリ削れるので、考えようによっては不思議。

セラカンナ

セラカンナ

 いくら便利とはいえ、これが1本2,800円というのは高すぎると思いますが、ほかに替わるものがないので、買うしかありません。ボークスさん、商売うまいよ。

■表面処理
 セラカンナで削ったあとは、スポンジやすりで仕上げます。削り口だけでなく、全身を研磨します。目の細かさは400番くらいから始めて、最後は1000番くらいがいいでしょう。このへんは好みに応じて加減してください。

 全身を研磨し終わったら、つや消しコートすると、さらに美しくなります。塗装はスプレー缶が便利です。ここで注意しなければならないのは、水性塗料の「つや消し」を使うことです。僕は最初「Mr.カラーつや消しコート」を使用していたのですが、これは素体が黄色く変色することがあります。原因は不明ですが、塗料に含まれる溶剤と素体に使われている接着剤が反応して、現象が起こるようです。←僕の推測なので間違っているかもしれません。

つや消しトップコート

500円

 水性塗料でも乾燥後は耐水性になります。塗膜強度が劣るので、傷が付きやすいかもしれませんが、問題となるほどではありません。可動部では塗料が粉になって剥がれますが、僕はあまり気にしていません。

 なお、お人形系の知人からは「塗装すると表面に汚れが移りやすいので、研磨だけにとどめておいたほうがいい」と助言されました。僕はいまのところ塗装派ですが、経年変化を考えると、これも一考の余地がありますね。

■可動部の修正
 ここまでの説明は「改造」というより、単なる「表面仕上げ」といった内容でしたが、もっと積極的にチューンアップしてみましょう。

 簡単なところからいくと、上腕側の肘関節の修正です。僕にはこれが尖って見え、どうも気になります。とくに肘を曲げると目立つので、やすりでザリザリ削ることにしました。腕がまっすぐのときはかえって変に見えるかもしれませんが、慣れると気になりません。曲げたときの形が自然で、しかも可動範囲が少しだけ拡大するので、これはやってもいいと思います。

加工前
1が気になる。
見る角度によっては、2も気になる。
加工後
尖った部分を削って丸めた。

 それと、足首も太すぎますね。そう思って削ってみたのですが、さほど効果を実感できませんでした。もっと大胆に削ればよかったかもしれませんが、下手にいじると形がおかしくなりそうなので、今回はパスします。

■首の改造
 もっとも重要な改造は首ジョイントでしょう。以前、自分なりの方法を考えたのですが、あれはさっぱりだめでした。先人の教えは偉大であることを再確認しましたよ(^^;。

 首をボールジョイント化すると可動範囲が拡大し、頭部の姿勢を保持しやすくなります。工作が簡単な割に効果は絶大なので、ぜひオススメします。ここでは、現時点で僕が最良と思う方法を解説しましょう。


上半身の加工

1.上半身を分解し、首ジョイントを取り外す。ジョイントの軸は折り取る。

2.上半身を仮組みして、ピンバイスでジョイント部の底に3ミリ径の穴をあける。

ピンバイス

ピンバイス。ようするに手動ドリル

手首パーツの交換にも必要なので、買っておくといいでしょう。先端のドリルは3ミリ径のものが1本あればとりあえずオッケー。合計で2,000円しないと思います。※ダイソーでは100円で売ってるそうです! ぐぉ…。

首改造部分

ピンを折り、底に穴をあけた。

3.リューターで首の内部を削って広げる。

電池式リューター

グンゼ産業のリューター。単4電池2本使用。定価2,000円

 リューターは乾電池式のもので充分です。ただし、先端工具によって作業の能率が激変します。首ジョイント部はタマネギ型の刃で削るといいでしょう。2本セットで1,500円。普通のおもちゃ屋で売ってたりするので、安いとこで買えばいいと思います。余談ですけど、「グンゼ産業株式会社」って、「株式会社GSIクレオス」に社名変更するんですね。

先端工具

タマネギ型というか、なんというか。

品番はGT21

セットの残りは不要な感じ(^^;

4.コトブキヤのボールジョイント(L)のメスをはめ込んで、組み立てる。

ポリユニット

5組で150円

 胴体側の加工が終わったら、つぎはジョイントの軸を作ります。

【ボールジョイントの製作】

1.コトブキヤのボールジョイント(L)のオスを、ランナーと一緒に切り取る。

オス

上のくびれ部が、わざと残したランナー

2.5ミリ径のプラパイプを26ミリの長さに切る。

ノコギリ

工作用ノコギリ。あると便利

3.プラパイプにエポキシパテを充填する。コヨリ状にして穴に差し込むと簡単。

エポパテ

これは速乾タイプ

4.プラパイプにボールジョイントを差し込む。可動範囲を確保するため、2ミリ程度の余裕を残す。

結合

内部にランナーのくびれを残すことで、すっぽ抜けを防いでいる

5.ボディ側のメスパーツにはめ込んで完成。

中の様子

内部の様子。組み立てに接着剤は不要


 ここまでの改造で首のジョイント化は達成できました。さらに追加して、上体パーツの喉を削ると可動範囲が広がります。うつむいた表情が可愛いので、これもぜひオススメです。

完成例

首の後ろ(背中側パーツ)は削らなくていい

 ボークスのヘッドは首の穴が小さいので、5ミリ径のプラパイプを使用しました。ところが、サアラや海ちゃんは首の穴が大きいので、そのままではグラグラになります。そのときは、5ミリ径のプラパイプに8ミリ径のプラパイプをかぶせるとちょうどよくなります。8ミリ径のプラパイプは内径が5ミリなんですね。プラパイプをかぶせるときも、エポキシパテを接着剤代わりに使うといいでしょう。パイプ同士の隙間が大きいためか、瞬間接着剤だとうまくくっつきません。接着剤の種類によりけりかもしれませんが、しっかり固定しておかないと、ヘッド内部に部品が落ちて取れなくなる危険性があります。ここはエポキシパテを上手に使いましょう。

断面図

断面図。黄色の部分がエポパテ


 いまのところ、僕なりの素体改造はここまでです。肘の二重関節化や、いわゆるニコイチ(ふたつの素体からひとつの素体を作る)まではやっていません。やってみたい気もしますが、難しそうです。

 それもこれも、すべては「可愛さ」のため。着せ替え人形は奥が深いですなあ(笑)。

【参考リンク】
La maison vinylique EB系素体の基本的な改造のページ

トップページへ戻る