日本プラモデル興亡史

2004/11/16

 今回は1冊の本を紹介したいと思います。主なターゲットは、サンダーバードのプラモを作ったことがあるような、いい年こいたオヤジかな? 僕もね…。

日本プラモデル興亡史日本プラモデル興亡史

 大正生まれのジジイが、自身の体験を元に、昭和初期から現代までのプラモデルの歴史を語った手記です。ゴム動力の木製飛行機からガンプラまで網羅した、素晴らしき模型オタクの自叙伝。ただのオタクと違うところは、好きが高じて19歳で模型店を開業、やがて模型専門誌「モデルアート」を発刊し、ついには博物館に置く1/1の飛行機模型にまで関わってしまうところ。ものすごいパワーです。よっぽど好きなんだなあ。

 なにしろ昭和一桁の時代からお話が始まるので、今の若いお人形者、たとえば20代の女性にはぴんとこないかもしれません。第2次世界大戦に召集されたくだりとか、飛行機模型に対する情熱とか、若い婦女子にはたぶん、ちょっとね。しかし、模型が好きという一点で志を同じくする人たちが互いに引き寄せられ、競い、惜しげもなく技術を交換し合い、やがて会社が興り、苦労して発売にこぎつけた商品が売れまくり、ブームが去り、会社が倒産し、そしてまた新しい勢力が台頭する。本書の著者は、そういう「日本の模型の歴史」を黎明期から知っている貴重な生き証人です。僕は、本書で語られるさまざまな人や企業の姿に、共感と尊敬を感じずにはいられませんでした。風の中のすーばるー♪


 たとえライバル企業同士であっても、業界全体の発展のために手を取り合う。これを単に「利害が一致したから」というのは簡単です。「店の常連が図面を引いた」「見学の際は軍が便宜を図ってくれた」「大いにやろうと意気投合した」。いずれも「おおらかな時代だったんですね」といってしまえばそれまでですが、ただおおらかなだけではなにも前進しなかったでしょう。いま我々は、やれドールだ、やれフィギュアだ、やれ限定品だと、さまざまなブームを大量に消費しまくっていますが、この爛熟した時代はいきなり出現したわけではありません。土台となる技術、それを作り上げてきた大勢の人たちがいてやっとここまできたわけです。新幹線も高速道路もなかった時代に東奔西走した爺様たちのおかげで、今の我々のオタクなシュミがあるのです。模型に限らず、人間の歴史は全部そうなんでしょうけどね。

 とくに強い感銘を受けたのはお話の後半、プラモデルの全国コンテストが好評を博し、ますますハイレベルになってからのことです。「歪んだマニア意識を生んだ」と批判され、著者自身も一抹の迷いを告白しています。海外では初心者も上級者も和気あいあいと趣味を楽しんでいるのに、どうして日本では他人の作品をけなすのか。コンテストで優劣をつけることと、それをひっくるめて全部を楽しむことが、どうして寛容できないのか。著者の問いかけの言葉は短くあっさりとしていますが、僕はお人形者の姿を見透かされた気がしました。お人形を巡ってときにヒステリックな反応を示す人を見かけますが、作り物の人形のために、生身の人間に向かって暴言を吐くことが「愛」なの?と考えさせられます。

 この著者は飛行機模型が特に好きですが、それ以外の模型も全て好きなのだそうです。分け隔てなく好き。だから模型とともに生きることができたのでしょう(←まだ死んでないと思うけど)。好き嫌いや優劣を問うのではなく、全部好き。70年以上の模型人生を語る爺様の言葉に、僕のような生半可なオタクは黙るしかないわけで。

 モデラーのみならず、お人形者にも読んでいただきたいと思います。

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